コロナ禍でリモートワークやオンライン会議が増えたことで、ビジネスマンの出張が大きく減りました。このことから、ビジネスホテルの需要が下がったと考えている人も多いのではないでしょうか。
実際のところ、ビジネスホテル経営にはどの程度可能性があるのでしょう。ビジネスホテル経営の現状や今後について、経営を成功させるポイントも交えてご紹介します。
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ビジネスホテル経営の現状は?
一昔前、「ビジネスホテル」といえば、文字通り出張のビジネスマンをメインターゲットにした宿泊施設でした。ところが近年では、おしゃれな内装のビジネスホテルやサービスが充実したビジネスホテルが増えたこともあり、ビジネスホテルが観光で利用されることも増えてきていました。
ワンランク上のビジネスホテルが増えたことで、「ビジネスホテル」と「シティホテル」の区別があいまいになっていたのがコロナ前の状況です。
2020年に新型コロナウイルスの感染拡大が本格化してからは、全国的に出張が激減。従来のビジネスホテルのメインターゲットであったビジネスマンの利用が急減することになります。
コロナ禍での旅行に対しては、「閉塞感のある日常を忘れたい」「リゾート気分を味わいたい」というニーズが多かったため、温泉宿やリゾートホテルはコロナ禍でも一定の人気を維持した施設もありました。「非日常」を売りにすることが難しいという点で、ビジネスホテルにとっては厳しい状態が続いてきたといえるでしょう。
実際に、観光庁が発表した宿泊旅行統計調査によれば、2022年9月の日本人の宿泊者数はコロナ前の5.4%減まで回復していますが、ビジネスホテルは20.2ポイント減と、苦戦が続いています。
ビジネスホテル経営の今後
コロナ禍で需要が大きく減った中でも、「テレワークプラン」などを打ち出し、市場環境の変化に対応することで急場をしのいできたというのが、多くのビジネスホテルの実態です。
ビジネスホテル経営を取り巻く環境は、今後どうなっていくのでしょうか。コロナ禍が収束すれば、激減したビジネス需要はある程度回復すると考えられますが、わざわざ出張しなくてもオンライン会議で事足りるケースも多いとわかった以上、出張需要が完全に元通りになることはないでしょう。
そのため、コロナ後の成長を考えるにあたっては、「コロナ後も出張需要は元に戻らない」ことを前提に戦略を描くことが大事になってきます。
前述の通り、コロナ前からビジネスホテルの客層の多様化が進んでいましたが、「ターゲット層の拡大」も対応策のひとつになるでしょう。
ビジネスホテルは宿泊に特化したシンプルな宿泊施設であり、かつ交通の利便性が高いロケーションにある施設が多いことから、戦略次第ではさまざまな需要の取り込みが可能になります。
ビジネスホテル開業時に必要な準備
アフターコロナを見据えて、ビジネスホテル経営に参入しようと考えている人もいることでしょう。そこで、ビジネスホテルの開業にあたって準備するべきことをお伝えします。
また、ホテル経営についてはこちらの記事も参考にしてください。
営業許可の取得
ビジネスホテルに限らず、営利目的の宿泊施設の開業には、旅館業法にのっとった営業許可の取得が必須になります。
営業許可を取得するためには、建物の構造や設備、立地条件などが法律・条例が定める基準を満たしていなければなりません。旅館・ホテル営業許可は各都道府県知事が交付するため、地域によって申請の流れが若干異なる場合がありますが、申請の要件を満たしているか、計画段階で事前に行政の担当窓口に相談するのが一般的です。
また、宿泊施設は旅館業法だけでなく、消防法や建築基準法、都市計画法といった関連法令にも関係してくるため、関係法令を所管する部署への相談が必要になってくる場合もあります。
認可許可証と宿泊施設の図面、その他自治体が定める書類と手数料を揃えて営業許可を申請すると、保健所による施設調査が入り、問題がなければ営業許可証が交付されます。
資金調達
ビジネスの開始には資金調達がつきものですが、中でもホテル業は多額の初期投資が必要です。
必要な投資額は、ホテルの規模などによって変わってきます。ビジネスホテルはリゾートホテルなどに比べると投資額が少ないものの、地方都市でも数千万円、立地や規模、設備の内容によっては数億円単位の投資が必要になることもあります。
物件の購入や建設
ホテルの運営形態には複数の種類があり、ホテルの所有者から建物を借りて経営する「リース方式」を採用するなどすれば、必ずしも建物の購入や建設は必須ではありません。
ただし、自社で建物の所有と経営を行う場合には、物件の購入あるいは建設のいずれかが必要になってきます。小さなビジネスホテルであっても、物件の購入や建設には1,000万円単位のコストがかかります。
中古の居抜き物件を探すなどすればコストは抑えられますが、開業後の収益性も考えて、立地や設備面での優位性も意識したいところです。
事業計画の作成
ホテル開業に限らず、新しいビジネスを始めるときには事業計画の策定が欠かせません。
事業計画を策定する目的は、市場や競合の状況を踏まえた上で、何をいつまでに、どのように行うのかを明確にしつつ、収益の見通しを立てることです。
具体的には、市場環境や競合の状況、ターゲット層やコンセプト、資金計画、収益見通し、採用計画などを盛り込むといいでしょう。
従業員の採用や集客
ホテルの運営にあたっては、顧客サービスやバックオフィス業務を担うスタッフの採用が不可欠です。最近はホテル業界の人材不足が深刻化していることもあり、すぐに採用したい人材が見つかるとは限りません。開業前の研修期間なども考慮し、早めに採用活動を始めたほうがいいでしょう。
また、オープンに先立って、集客の準備も早めに進めておく必要があります。ホームページやSNSアカウントの開設、ホテル予約サイトへの掲載など、Webを活用しながら、ホテルのターゲット層やコンセプトに合った戦略を立ててください。
集客などについてはこちらの記事も参考にしてください。
ビジネスホテル経営を成功させるためのポイント
昨今、ライフスタイルホテルやグランピングなど、多様化・細分化が進むホテル業界。洗練された空間とサービスを提供するビジネスホテルも増えている中、ビジネスホテル経営を成功させるにはどのようなことを意識すればいいのでしょうか。
宿泊以外で需要を作る
ビジネスホテル経営を成功させるポイントのひとつが、宿泊以外の需要を創出することです。
これまでのビジネスホテルは宿泊利用が前提でしたが、宿泊需要に限定した場合、連泊中の客室を除き、前の宿泊客がチェックアウトしてから次の宿泊客がチェックインするまで、長時間のアイドルタイムが発生することになります。
そこで、「テレワークプラン」などを打ち出して日帰りの利用を促進することで、収益の拡大を図ることができます。テレワークニーズに対応したサブスクリプション型のプランなど、今後は日中利用向けのさまざまなプランが増えていくでしょう。
集客施策の徹底
どんなに魅力的な空間やサービス、プランを用意したとしても、ホテルの存在を知ってもらわなければ話になりません。「ホテルをオープンしたら自然とお客様が来る」という時代ではないので、ビジネスホテル経営を成功させるには、攻めの集客施策が必要になってきます。
TwitterやInstagramなどのSNSの活用はもちろんのこと、プレスリリースの配信をはじめとするPR活動やWeb広告の活用も選択肢のひとつです。Webマーケティングについてはこちらの記事も参考にしてください。
集客においては、ただやみくもに情報発信や広告出稿をするのではなく、ホテルのコンセプトやターゲット層を踏まえた一貫性のある施策を実施するようにしましょう。
まとめ
コロナ禍で厳しい状況に置かれてきたビジネスホテルですが、市場環境の変化に対応したプランを打ち出すことで、うまく乗り切ってきた施設も少なくありません。
コロナ禍が収束しても、出張需要は完全に元に戻ることはないとみられますが、ビジネス以外の需要や宿泊以外の需要を取り込むことで、成長できる余地は残されているといえるでしょう。
■記事作成:メトロエンジン株式会社
2016年創業。ダイナミックプライシングを活用したSaaSシステムのパイオニアとして躍進。ビックデータから人工知能・機械学習を活用し、客室単価の設定を行うダイナミックプライシングツールをホテルなど宿泊事業者に提供。また、レンタカー業界や高速バス業界など幅広い業界のDX支援事業も展開している。
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