ダイナミックプライシングとは? – 需要と供給に応じた価格戦略の解説

ダイナミックプライシングとは?

ダイナミックプライシングは、需要と供給に応じて価格を変動させることを指し、多くの場合は機械学習を活用したアルゴリズムによって自動的に価格が算出されるものです[1]。ホテル業界では、予約状況や需要予測に基づいて価格を最適化するために、この手法が広く採用されています。本記事では、ホテル業界におけるダイナミックプライシングの高度な戦略と実践方法について解説します。

ホテルのダイナミックプライシングは収益性を上げる仕組み

ホテル業界でのダイナミックプライシングの成功には、正確な需要予測が重要です。需要予測には、過去の宿泊データやイベント情報、天候予報などの外部要因を考慮し、機械学習アルゴリズムを用いて予測モデルを構築します。これにより、需要のピークやオフピークを予測し、価格設定の最適化が可能になります。

高度なセグメンテーション戦略

ホテル業界におけるダイナミックプライシングでは、顧客を異なるセグメントに分け、それぞれに最適な価格を提供することが重要です。例えば、ビジネス客や観光客、団体客などのセグメントごとに、異なる需要パターンが存在するため、それぞれに合わせた価格戦略を立てることが求められます。

競合分析と価格戦略

競合他社の価格やサービス内容を分析し、自社の価格戦略を見直すこともダイナミックプライシングの一部です。競合分析により、自社のサービスが市場でどのような位置づけにあるのか把握し、適切な価格設定を行うことができます。

チャネルマネジメントとダイナミックプライシング

ホテル業界では、オンライン予約サイト(OTA)や直接予約など、さまざまな販売チャネルが存在します。ダイナミックプライシングを効果的に活用するためには、これらのチャネル間で価格の一貫性を保ちつつ、チャネルごとの販売戦略を最適化することが重要です。チャネルマネジメントソフトウェアを活用することで、リアルタイムで価格変更を各チャネルに反映させることが可能になります。

顧客ロイヤルティプログラムとダイナミックプライシング

ダイナミックプライシングを実施する際、顧客ロイヤルティプログラムを適切に活用することで、顧客満足度の向上やリピート率の向上を図ることができます。顧客ロイヤルティプログラムにより、特典や割引を提供することで、顧客が価格変動に対する不満を軽減し、長期的な関係を築くことができます。

データ活用とプライバシー保護

ダイナミックプライシングの実践には、大量の顧客データが必要ですが、その際にはプライバシー保護に配慮することが重要です。データの収集、分析、利用にあたっては、適切なセキュリティ対策を講じ、顧客からの信頼を得ることが求められます。

効果測定と改善サイクル

ダイナミックプライシングの成功には、定期的な効果測定と改善が欠かせません。KPI(Key Performance Indicator)を設定し、価格戦略の効果を定期的に評価することで、改善点を特定し、戦略の最適化が可能になります。

ダイナミックプライシングを導入するメリットとは?

前述の通り、ホテルにおけるダイナミックプライシング導入のメリットは、需要と供給の状況に応じて最適な価格を設定することにより、収益の最大化が図れる点です。

ホテル業界には繁忙日と閑散日が存在しますが、繁忙日と閑散日で同じ宿泊料金を設定してしまうと、閑散日の客室稼働率は極端に下がってしまうでしょう。反対に、大型連休など需要が集中する時期は、本来なら宿泊料金を上げることで得られたはずのプラスアルファの売上・利益を逃してしまうことになります。

そこで、ダイナミックプライシングを導入して閑散日の価格を下げ、繁忙日の価格を下げることによって、閑散日の客室稼働率を改善することができます。さらに、需要が高まる繁忙日は宿泊料金を上げることによって、プラスアルファの売上・利益を上積みし、収益の最大化を図ることができるのです。

ダイナミックプライシングを導入するデメリットとは?

ダイナミックプライシングは収益最大化を図るための仕組みですが、必ずしもいいことばかりというわけではありません。ホテルがダイナミックプライシングを導入するデメリットのひとつに、業務負荷の増加が挙げられます。

データ収集・分析、需要予測を経てきめ細かく価格を変動させるダイナミックプライシングの実行には、多くの時間と手間を要します。最近では、AIを活用したツールの登場によりダイナミックプライシングのプロセスの大部分を自動化できるようになりましたが、それでも365日同じ価格で販売するのと比べれば、時間と手間がかかり、管理が煩雑になることは否めません。

また、ダイナミックプライシングは「顧客離れ」のリスクもはらんでいます。週末や大型連休など、需要が高まるタイミングではホテルの宿泊料金が上がるのは半ば常識となっていますが、いくら需要が高まるからといって過剰に価格を吊り上げてしまうと、お客様に悪印象を与えてしまい、顧客離れにつながってしまう可能性があります。

ダイナミックプライシングのメリット・デメリット、実践事例については、こちらの記事でも紹介しています。

ホテル業界のダイナミックプライシングの歴史

ホテル業界におけるダイナミックプライシングには、すでに数十年の歴史があります。先陣を切ったのはアメリカで、1980年代後半には、担当者の人の手によるダイナミックプライシングが行われていました。

テクノロジーが進展した現在は、人の手によるダイナミックプライシングは廃れ、世界的にAIを使ったダイナミックプライシングツールによる自動化が進んでいます。

ホテル業界のダイナミックプライシング活用事例

ホテルイメージ

では、実際にホテル業界ではどのようにダイナミックプライシングが活用されているのでしょうか。国内外の3つの事例をみてみましょう。

Hotel Windsorのダイナミックプライシング活用事例

インド北部の都市パトナにある中規模ホテル「Hotel Windsor」は、大幅な値下げを避けた結果、周辺の格安ホテルとの価格競争に負けてしまっていました。また、需要に応じた柔軟な価格設定の重要性は理解していたものの、価格変更を手動で行っていたため、価格変更の頻度は週1回程度にとどまっていたのです。

そこで、2018年にaiosellという企業のダイナミックプライシングツールを導入。それ以降は、季節や曜日、予約のタイミングなど、さまざまな要素に基づいて、柔軟な価格変更が自動で行えるようになりました。ただし、ブランドイメージを棄損するような過剰な値下げは避け、売れないと判断した客室だけを直前に値下げすることで、稼働率向上を実現しています。

星野リゾートのダイナミックプライシング活用事例

日本のレジャー業界で常にその動向が注目される星野リゾートも、ダイナミックプライシングを活用しています。

「繁忙日は価格を上げ、閑散日は価格を下げる」という基本的な考え方はほかのホテルと同じですが、星野リゾートは施設ごとに繁忙日の価格の上限値を設けている点が特徴的です。いくら繁忙日でも価格を過剰に吊り上げると顧客満足度が下がってしまうため、顧客満足度を維持するため、上限値以上には価格を上げないようにコントロールしているのです。

OYOのダイナミックプライシング活用事例

2019年に日本でもサービスを開始した「OYO」は、インド発の成長著しいホテルサービスで、データを駆使したダイナミックプライシングに力を入れていることで知られます。

RevPAR(1室あたりの売上)を最大化するため、1時間あたり14万件にのぼるビッグデータを基に、全世界の加盟ホテルを対象に1日6000万回以上もの価格調整を行っています。

その結果、客室稼働率を高めることに成功し、2013年の創業以降、アジア圏で急成長を遂げてきました。

ダイナミックプライシングの成功事例についてはこちらの記事でも詳しく紹介しています。ぜひご覧ください。

まとめ

最近注目を集めるダイナミックプライシングは、デメリットもあるものの、効果的に活用すればホテルの収益を最大化できる仕組みです。ダイナミックプライシング導入にあたっては、価格を下げすぎてブランド価値を棄損したり、価格を上げすぎて顧客離れを起こしたりすることのないよう、適正な範囲で価格をコントロールすることが大切だといえそうです。

■記事作成:メトロエンジン株式会社

2016年創業。ダイナミックプライシングを活用したSaaSシステムのパイオニアとして躍進。ビックデータから人工知能・機械学習を活用し、客室単価の設定を行うダイナミックプライシングツールをホテルなど宿泊事業者に提供。また、レンタカー業界や高速バス業界など幅広い業界のDX支援事業も展開している。

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