ホテル客室料金の最適設定法:決定手法から変動要因まで徹底解説!

ホテルの料金は「いつ泊まっても一年中同じ」ということはほとんどなく、利用者が増える週末や連休には料金が上がるなど、需要に応じて変動するのが一般的です。

細かく変動するホテルの客室料金は、いったいどのようにして決まっているのでしょうか。ホテルの料金設定の仕組みや、客室料金が変動する理由、最適な料金設定を行う方法まで、丁寧に解説します。

ホテルの客室料金設定のための5つの仕組み

多くの人が「以前泊まったホテルの料金が上がっていた」「同じホテルでも曜日によって宿泊料金が大きく変わる」という経験があるでしょう。ホテルの宿泊料金は季節や曜日、予約タイミングなどによって変わりますが、料金設定の背後にある仕組みはどのようになっているのでしょうか。

本記事では、ホテルの客室料金を決定する5つの要因をわかりやすく解説します。ただし、これらの要因は単独ではなく、多くのホテルが複数の要因を組み合わせて料金設定を行っている点に注意してください。

ホテルの原価から料金を割り出す

ホテル経営の基本は、宿泊サービスを原価に利益を上乗せした価格で提供することです。

ホテル業界では、建物の取得・維持費、人件費、広告宣伝費、清掃費などのさまざまなコストが発生し、これらは宿泊料金に反映されます。

ホテル業界では小売業とは異なりますが、「原価」が存在し、これを上回る売上が得られなければ経営は成り立ちません。そのため、運営コストを計算し、利益が出る宿泊料金を設定することが重要です。

ホテル料金決定の要素を理解することで、適切な宿泊価格を提供し、成功した経営を実現できます。

ホテルの客室の種類から料金設定する

ほとんどのホテルでは、全ての客室が同じ料金ということは稀で、ホテル内には異なるグレードの客室が存在し、それぞれに応じた料金が設定されています。

具体的には、客室の広さ、設備、内装のクオリティ、階数、眺望などで料金が変動します。これにより、広い部屋や海が見える部屋など、付加価値の高い客室の料金が自然と上昇します。

客室グレードに応じた適切な料金設定を行うことで、お客様のニーズに合わせたサービスが提供でき、ホテル経営にも寄与します。

ホテルの利用者層に応じて料金設定する

ホテルの立地、価格帯、設備などによって利用者層が異なり、それに伴って宿泊利用が集中する曜日も変わってきます。例えば、出張ビジネスマンが多いホテルの場合、平日、特に水曜日や木曜日に利用者が増える傾向があります。そのため、これらの曜日の宿泊料金を高く設定し、日曜日は安くするなどの調整が必要です。

一方で、家族連れが多いホテルの場合、週末が最も利用者が多くなる時期です。特に学校が休みになる春休みや夏休み中などの週末は、料金を大胆に上げることが考えられます。一方で、平日は料金を下げることで利用者を誘引し、経営に寄与させることができます。

ホテルの競合の平均価格に合わせる

宿泊料金を決定する際には、競合するホテルや旅館の料金を把握し、エリアの相場に基づいて料金設定を行うことが重要です。

競合ホテルと比較して料金が高すぎる場合、選ばれなくなるリスクがあります。一方で、料金が安すぎると、収益が悪化する可能性があります。そのため、エリア内の競合ホテルの料金を考慮し、バランスの取れた料金設定が求められます。

適切な料金設定によって、顧客満足度を高めながら収益性も維持することができ、ホテル経営の成功につながります。

人工知能サービスを利用してホテルの料金設定をする

多くのホテルで、需要と供給の状況に応じて柔軟に宿泊料金を変動させるダイナミックプライシングが採用されています。ダイナミックプライシングでは、過去の実績やカレンダーなど様々な情報を収集・分析し、それを基に需要予測と料金調整が行われます。

しかし、このプロセスは手間がかかる上、担当者の直感に依存する部分もあるのが現状です。近年では、大量のデータに基づいて最適な客室料金を提案するAIシステムが開発され、導入するホテルが増えています。

AIシステムの活用により、高精度な料金設定が可能となるだけでなく、現場の業務負荷も軽減されるというメリットがあります。これによって、ホテル経営の効率化と収益向上が期待できます。

ホテルの料金が変動する理由とは?

宿泊する日や予約するタイミングによってホテルの料金が変動するのは半ば常識になっていますが、そもそも、ホテルの客室料金はなぜ変動するのでしょうか。

ホテルは在庫が繰越せない産業

前提として、ホテルは在庫の繰り越しができない産業であることが挙げられます。小売業であれば「需要が少ない時期に売れ残った商品を保管しておき、需要が多いときに売る」ということができますが、ホテルではそれができません。

需要が少ないからといって、部屋を空室のまま遊ばせておくようなことはできるだけ避けたいもの。そこで、需要が少ないときは客室料金を下げて空室を埋める工夫が生まれたのです。

ホテルの収益最大化を図るため

需要と供給の状況に応じて客室料金を柔軟に変動させるということは、需要が少ない時期には料金が下がり、需要が多い時期には料金が上がるということです。

ゴールデンウィークや年末年始など、需要が集中する時期にはそれに応じて宿泊料金を引き上げることによって、プラスアルファの売上・利益が得られます。

また、需要が少ない閑散期には、値引きをしてでも客室を埋めたほうが売上・利益が向上します。このように、需要に応じた柔軟な料金変動は、ホテルの収益最大化につながるのです。

ホテルの料金変動についてはこちらの記事をご覧ください。

需要と供給のバランスが重要

ホテルの客室料金設定にはさまざまな方法がありますが、いずれの場合も需要と供給のバランスが重要になってきます。

いくら連休の書き入れ時だからといって、あまりにも料金を上げすぎるとお客様に敬遠されかねません。

また、いくら空室を埋めたいからといって、赤字になるほど値引きをしたり、過剰な値引きによってブランド価値を棄損してしまったりしては本末転倒です。

ホテルの客室料金設定においては、いかに正確に需要を予測し、その需要に見合った適切な料金が導き出せるか、また、いかに最適なタイミングで料金変更が行えるかがポイントになります。

ホテルの価格変動システムとは?

ホテルの価格変動システムは、需要と供給の状況に応じて柔軟に客室料金を変動させる仕組みのことです。簡単に言ってしまえば「人気のある日を高く売り、人気のない日を安く売る」仕組みだと言えるでしょう。

また、宿泊する日程だけでなく予約するタイミングも重要で、同じ日程・同じホテル・同じ部屋でも、予約するタイミングによって料金が変動することもあります。これは、空室状況などに応じて料金の調整が行われることがあるからです。

ホテルの需要は季節や曜日などによって大きく変動するため、過去のデータやカレンダーを基に需要を予測し、最適な料金を導き出すことが大切なのです。需要予測に基づいて、最適な料金を設定し、収益を最大化することを「レベニューマネジメント」と呼びます。

レベニューマネジメントの基本については、こちらの記事で詳しく紹介しています。ぜひご覧ください。

レベニューマネジメントシステムとは

前述の通り、ホテル経営におけるレベニューマネジメントとは、需要予測に基づいた最適な料金設定を行い、収益最大化を図ることです。このレベニューマネジメントをサポートしてくれるのが「レベニューマネジメントシステム」です。

レベニューマネジメントシステムを導入することで、複雑な料金調整が自動化できます。最適な客室料金を導き出すには、過去の売上実績やカレンダー、イベント情報などを収集・分析し、今後の需要を予測する必要がありますが、レベニューマネジメントシステムがAIや機械学習を駆使して最適な料金を提案してくれるため、現場の負担を軽減しながらレベニューマネジメントが実践できるのです。

ホテルの料金調整の際、売上を落とさない方法

客室料金の設定は、ホテルの収益を左右するデリケートな問題です。

需要予測と最適価格の導出

いくら需要の多い時期でも極端に料金を上げてしまうと、お客様に敬遠され思うように客室稼働率が上がらないばかりか、「人の足元を見るホテルだ」と悪印象を持たれてしまう可能性があります。反対に、過剰な値引きはホテルの収益悪化につながります。

そこでポイントになってくるのが、正確に需要を予測し、それに見合った最適な価格を導き出すことです。そのためには、レベニューマネジメントツールの活用も視野に入れるべきでしょう。

価格戦略とホテルのコンセプト

また、ホテルのコンセプトや利用者層に合った価格戦略も重要になってきます。例えば、出張者のリピーターが多いビジネスホテルであれば、「日によって極端な料金差がないほうが安心して泊まってもらえる」との考えのもと、あえて料金を大きく変動させないのもひとつの戦略です。一方、イベントや記念日など特別な機会に利用されることの多い高級ホテルやリゾートホテルの場合は、連休やイベントの時期に思い切って料金を上げることで収益アップが見込めるでしょう。

ホテルの思想と戦略

「需要と供給の状況に応じて料金が変動する」というのが多くのホテルにおける基本的な料金設定の考え方ですが、「いつ・どんなときに料金を変動させるか」「どの程度まで変動の幅を持たせるか」は、ホテルの思想や戦略が表れる部分でもあるのです。

まとめ

ほとんどのホテルで変動料金が導入されている背景には、「在庫が繰り越せない」「季節や曜日などによって需要が大きく変動する」というホテル特有の事情があります。

「売り時」を逃してしまうと売れなくなってしまうからこそ、需要に応じた最適な料金を導き出し、最適なタイミングで料金変更を実施することが収益を左右する重要な要素になっています。これからのホテル経営においては、レベニューマネジメントツールの導入も含めた自動化・効率化がさらに加速していくでしょう。

■記事作成:メトロエンジン株式会社

2016年創業。ダイナミックプライシングを活用したSaaSシステムのパイオニアとして躍進。ビックデータから人工知能・機械学習を活用し、客室単価の設定を行うダイナミックプライシングツールをホテルなど宿泊事業者に提供。また、レンタカー業界や高速バス業界など幅広い業界のDX支援事業も展開している。

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