経営するホテルの収益を拡大するには、ターゲット層へアピールし、利用者を増やしていくのが重要です。利用者を増やすうえで、マーケティング戦略をどうすれば良いか悩む担当者の方も多いのではないでしょうか。 そこで、ホテルのマーケティングはどうすれば良いのか? 集客に役立つ4つの戦略や具体的な集客方法、成功事例など、ホテル経営に欠かせないマーケティングを丁寧に解説していきます。
ホテルの集客力を上げるポイントについては、こちらの記事でも紹介しています。
ホテルのマーケティングとは?
マーケティングとは、顧客のニーズを読み取り、最適な商品・サービスを提供するための市場調査や企画戦略を指します。
上記の概念はホテル業界にあてはめても同様で、顧客のニーズを読み取り、利用したくなる宿泊プランやイベント、施設を提案・実行するのがマーケティングです。
マーケティングの結果として、認知度の向上やホテル利用者数の増加が期待でき、効果的なブランディングとして貢献します。
ホテルにおけるマーケティング戦略
ホテルにおけるマーケティング戦略は、以下の4つがあります。
- アウトバウンドマーケティング
- デジタルマーケティング
- 口コミマーケティング
- ブランドマーケティング
それぞれで戦略・考え方が異なるため、自社に適したマーケティング戦略を選択すべきです。
では、4つのマーケティング戦略について、具体的に見ていきましょう。
ホテルのアウトバウンドマーケティング
アウトバウンドマーケティングは、ホテル側から見込み顧客へアプローチを行う手法で、
- テレビや動画プラットフォームのCM
- つり革広告
- 看板広告
- DM(ダイレクトメール)
- 展示会
- 新聞・雑誌の広告・折込チラシ
- バナー広告
以上のような手法が分類されます。
具体的には、旅行雑誌に広告を掲載する、つり革広告にお得な宿泊プランを掲載するなどです。
アウトバウンドマーケティングは、不特定多数の人にアプローチができて即効性があるため、昔から取り入れられている手法です。
ただし、潜在ニーズを含む見込み顧客に向けた発信になるので、多額の費用が発生するほか、ペルソナ設定を間違うと、大きな損失に繋がる場合もあります。
ホテルのデジタルマーケティング
デジタルマーケティングは、インターネットやIT技術を用いたマーケティング手法で、
- Webサイト・ホームページ運用
- コンテンツマーケティング(オウンドメディアの保有など)
- インターネット広告(リスティング広告・ディスプレイ広告など)
- SEO・MEO対策
- 動画マーケティング
- アクセス解析
- SNS運用
など、さまざまな種類があります。
特に最近では、ホテルがホームページを開設していることは珍しくなく、宿泊プランや部屋の写真など、ホテルの魅力を詰め込んだコンテンツを制作しています。
また、ターゲット層に近しいインフルエンサーを起用しSNSで発信してもらう、といった手法は現代において主流のマーケティング戦略の1つです。
ホテルの口コミマーケティング
口コミマーケティングは、ホテルを利用した顧客が投稿した感想をもとに、認知度の向上や集客へつなげる手法です。他のマーケティング手法よりもコストがかからず、顕在的なニーズを持った顧客へアピールができます。
また、口コミはホテルを訪れようか迷っている顧客への動機付けに貢献するため、どれだけ利用のきっかけとなる感想を投稿してもらえるかが大切です。
ただし、あくまで顧客の感想になるので、イメージ通りの内容を投稿してもらえるわけではありません。
良い口コミが投稿されるように、サービス品質の向上やプランのブラッシュアップなど、企業努力の上で、成り立つマーケティング手法といえるでしょう。
ホテルのブランドマーケティング
ブランドマーケティングは、認知度向上やブランドイメージを浸透させるために用いる手法です。
- 安いホテルといえば◯◯
- 最高のサービスを提供してくれるホテルは◯◯
- ◯◯ホテルは楽しいイベントを定期的に開催している
といった印象を与えることで、自ずとユーザーのニーズに応えられるようなホテルとして普及されるようになります。
ただし、ブランドマーケティングは長期的なスパンが必要となり、不祥事やイメージダウンにつながる対応は、必要以上に信用が落ちるでしょう。
それだけに、積み上げてきた信頼関係やイメージを保てるよう、ブランディングと共に品質の保持も考えなくてはいけません。
ホテルのブランディングについてはこちらの記事で詳しく紹介しています。ぜひご覧ください。
ホテルに集客するための具体的な4つのステップ
ホテルで集客するためには、
- ペルソナ設計
- 自社の強みの把握
- ホテルのコンセプト
- 競合の調査
以上の4つのステップが必要です。では、それぞれどのような項目になるのかを見ていきましょう。
①ホテルに来る人物像「ペルソナ」の設計
ホテルによって来客するターゲットは異なります。そのため、自社のホテルを利用する顧客の特徴を持つ人物像を具体的に絞り込み、「ペルソナ」に設定しましょう。
特徴については、
- 年齢
- 性別
- 家族構成
- 年収
- 趣味
- 生活スタイル
といった細かな部分まで決めていく必要があります。
また、ホテルに訪れる客層は複数あるため、大体3〜6名分のペルソナを設定しておくと、マーケティング戦略に活用可能です。
例えば、
- ビジネスで利用する人
- 家族旅行で利用する人
- カップル・夫婦で利用する人
- ひとりで利用する人
など、さまざまなペルソナが考えられます。
ただし、注意したいのがペルソナは、これまでの顧客データを参考にしながら、行動パターンやニーズを正確に把握し、つくりあげていかなくてはいけません。正確にペルソナが設定できると、ホテルを認知してから宿泊利用、リピーターになるまでの動向も見えてくるはずです。
②ホテル(自社)の強みを把握する
マーケティング戦略においては、自社ホテルの強みや魅力を把握し、アピールしていくのが基本です。
そのため、自社ホテルにはどのようなアピールポイントがあるのかを分析しましょう。
例えば、以下のような強みや魅力、個性があるとアピールポイントにできます。
- 部屋から自然や街の風景が一望できる
- ホテルが歴史や伝統のある建物として知られている
- お風呂や温泉が魅力的
- 家族連れでも楽しめるアミューズメント施設を併設している
- 厳選した食材を使ったお食事プランを用意している
強みとしてアピールできるのであれば、いくつあっても構いません。
自社ホテルを徹底的に分析し、競合にも負けないような独自の強み・魅力を見つけていきましょう。
https://kbcompany.jp/blog/store/345/ (※「ステップ①:ホテル・旅館宿の強みやアピールポイントを把握する」を参照)
③ホテル(自社)のコンセプトを決める
ホテルのコンセプトは、営業当初に決めている企業も多いはずです。しかし、長年営業を続けていると、現代にフォーカスされたコンセプトではなくなっている可能性もあるでしょう。
特に、ホームページやSNSによる集客を検討している場合、若年層に向けたコンセプトの打ち出しが必要です。まずは既存のコンセプトで進めるのか、新しいコンセプトを作っていくかを検討してください。
もし、新しいコンセプトを決める場合、先ほど設定したペルソナが魅力と感じてもらえるものにすべきです。
自社の強みを活かしながら、新しいコンセプトを決めていきましょう。
④ホテルの競合を調査する
マーケティング戦略において欠かせないのが競合の分析です。競合を細かく分析・調査することで、自社ホテルの集客に活かせる課題が見えてきます。
ここでは、調査をする際に必要なポイントを4つにまとめましたので、それぞれ見ていきましょう。
競合価格調査
競合が提供しているサービスや宿泊プランにおける価格調査は、市場の価値を知るのに必要です。
自社と全く同じサービスを提供している競合の方が価格が安い場合、
- 立地や景観で差別化できないか
- スタッフの接客や対応で優れているか
- 競合よりも価格を下げたプランを再構成するか
といったような判断ができます。
口コミ管理
競合がどのような口コミが投稿されているのかも、マーケティング戦略を考える上でヒントになります。お客様が満足している点は競合の強みになるため、自社でも取り入れられないかを検討してみましょう。
また、口コミによっては要望や悩みを投稿している場合もあります。
もし、ペルソナに設定しているターゲット層のニーズであった場合、自社で実現できると差別化であり大きな強みにもなるでしょう。
そのため、自社だけでなく競合の口コミの調査も忘れないように行ってください。
イベント調査
ホテルの周辺あるいは地域でイベントが行われていないかどうかを調査すると、ある程度の流入も予測可能です。
例えば、近くでコンサートがあった場合、前乗りあるいは当日に宿泊をするお客様が利用すると判断できます。イベントを把握しておくと突発的な需要に備えられるので、競合だけでなく周辺地域で何か催し事があるかも含めて調査しましょう。
周辺情報
自社ホテルの周辺には、どのような競合がいるのかを調査します。隣接する競合の場合は、特に差別化を意識してサービス提供を考えなくてはいけません。
また、エリアのトレンドに合わせたサービスやイベントを開催し、集客するという方法も取れるでしょう。
ホテルマーケティングの成功事例
マーケティング戦略を実際に成功させ、収益を伸ばしたホテルの事例をいくつか紹介します。自社ホテルにも応用ができないかを含めて、ぜひ参考にしてください。
ザ・サウザンド キョウト
ザ・サウザンド キョウトは京都市にあるホテルで、期間限定のイベントや、アニバーサリープランを提供し、マーケティングを成功させています。
- 館内アートをスイーツで表現した「THOUSAND Art Collection」
- シャインマスカットを1房使用した「秋のまるごとパルフェ」
- ワインについて学べるセミナー
上記のように、料理に関する期間限定のプランや、ホテルが提供するワインや日本酒に関するセミナーやトークショーをしているのが特徴です。
また、上記を含むホテルの魅力をインスタグラムなどのSNSで発信し、現代に適したマーケティングを取り入れています。
MIMARU 京都 STATION
MIMARU 京都 STATIONは京都市南区にあり、京都駅の目の前にあるホテルです。大阪・奈良・琵琶湖にもアクセスしやすいため、観光・体験を強みとしてマーケティングを行っている印象があります。
「みんなで泊まって、みんなで楽しむ」というキャッチコピーをもとに、ホームページやSNSでも、みんなで泊まれるホテルの楽しみ方を発信しています。
FAV HOTEL TAKAMATSU
FAV HOTEL TAKAMATSUは、香川県高松市にあるホテルで、デジタルマーケティングを積極的に取り入れている印象です。
例えば、SNSではホテル周辺の景色やアート、ご当地グルメを紹介し、高松全体の魅力を伝えてファンを増やしています。
また、動画コンテンツとしてYoutubeでも情報を発信し、写真や画像だけでは表現できない魅力を紹介しています。
ロテルド比叡
ロテルド比叡は京都市左京区にあるホテルです。会員制度を導入し、入会したお客様には特典が得られる特別感を演出し、リピーターを獲得する手法を用いています。
ホテルから見える景色が強みであるため、ホームページには風景写真を多用し、思わず足を運びたくなるような工夫がされているのも印象的です。
また、観光スポットの紹介によって集客を行うコンテンツマーケティングも見受けられます。
ホテルハーヴェスト斑尾
ホテルハーヴェスト斑尾は、長野県上水内にある広大な自然に囲まれたホテルです。ホテル周辺にはタングラムスキーサーカスや斑尾高原スキー場があるので、全シーズン観光ができる名所に位置しています。
上記を含むホテルや周辺の楽しみ方を、ホームページ内のブログでスタッフが紹介するという手法を取り入れているのも特徴的です。
従業員が紹介するからこそ信頼できるコンテンツだと思わせ、ファンやリピーターを増やしています。
浪漫の館月下美人
浪漫の館月下美人は長野県下伊那にある、満点の星空がどの部屋からも眺められる絶景ホテルです。
TwitterやFacebookを活用し、SNSでの情報発信をしつつ、サービス品質にこだわることで、口コミによる拡散を狙った手法が見受けられます。
Googleマップの口コミでも2022年8月現在で星評価4.1投稿数140以上と、顧客満足度の高さがわかります。
まとめ
今回は、ホテルのマーケティング戦略の方法や成功事例についてご紹介しました。ホテルとはいえ、マーケティングの手法は他の業種と大差ありません。
大切なのは、ペルソナを正しく設定し、自社の強みや競合分析を通して、最適なコンセプトのもと、集客を行っていくことです。
ぜひ、集客に悩んでいるホテル業者がいましたら、本記事を参考にマーケティング戦略を練り直し、効果的なアプローチをしてみてください。
■記事作成:メトロエンジン株式会社
2016年創業。ダイナミックプライシングを活用したSaaSシステムのパイオニアとして躍進。ビックデータから人工知能・機械学習を活用し、客室単価の設定を行うダイナミックプライシングツールをホテルなど宿泊事業者に提供。また、レンタカー業界や高速バス業界など幅広い業界のDX支援事業も展開している。
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