ホテルの宿泊料金が土日祝日や季節によって変動することは、現代において一般知識として浸透しています。
しかし、ホテルの従事者側からすると、需要に合わせた料金設定は非常に難しく、適切な市場の予測が必要です。
では一体、他のホテル業者は宿泊料金の変動をどのように設定しているのでしょうか。
本記事では、ホテルの料金変動の理由や決め方とともに、価格変動システムの導入について解説します。
Contents
ホテルの料金が変動する理由とは?
そもそも、同じ部屋だとしても、なぜ宿泊料金を変動させなければいけないのでしょうか。
まずはホテルの料金が変動する理由について見ていきます。
在庫を繰り越すことができない産業のため
ホテル業界は部屋を在庫としているため、次の日に繰り越すという概念はありません。
一般的な商品なら、当日に売れなくても消費期限や利用期限内であれば数日は在庫を持ち越せるでしょう。
しかし、宿泊する部屋を次の日に持ち越すのは物理的に不可能なので、最大限の利益を出すには満室にする必要があります。そこで、空室が出そうな状況では価格を下げて集客を促す、といった価格変動を行うのです。
得られるはずの収益を最大化するため
ホテルの料金変動システムは、収益最大化を目的に導入されます。
部屋料金と利益の最適化
10室の部屋が各1万円である場合、全室が予約されると10万円の利益が得られます。しかし、実際には6室しか埋まらず、利益は6万円になります。
この時、残りの4室を8,000円で提供すると、価格の魅力で利用者が増え、6万円以上の利益が発生します。
また、夏休みなど宿泊需要が高い時期に1室を12,000円で提供し、満室になれば12万円の利益が得られます。つまり、通常の利益よりも2万円増加します。
料金変動のメリット
- 料金の安さが決め手となる層を獲得
- 通常料金より高く設定しても宿泊したい層を獲得
需要を正確に予測し、料金変動を行うことで利益を最大限に獲得することが可能です。
需要と供給に見合ったホテルの料金を決める方法
ホテル事業は需要を的確に予測し、適切な供給を行うことで成り立つ事業であることがわかってもらえたはずです。
このように、需要に合わせて料金を変動させる仕組みをダイナミックプライシングと呼びます。
ダイナミックプライシングについて、より詳しく知りたい方は、こちらの記事で紹介していますのでご覧ください。
では、ダイナミックプライシングを行うには、どのような要素で料金決定の判断をしていけばいいのでしょうか。
利用者層に合わせて価格を決める
顧客層によって価格帯は異なります。
ビジネスホテルの価格設定
出張目的の客層が多いビジネスホテルでは、平日の需要が高いため、土日は安く、平日は高めの料金設定が効果的です。
リゾートホテルの価格設定
一方、レジャー目的のリゾートホテルでは、土日や連休、長期休みシーズンに料金を高く設定すると良いでしょう。
経済状況の影響
ただし、経済の動きも考慮して料金決定が必要です。景気が悪い場合、旅行を控える客層が増えるため、売れ残りに注意が必要です。逆に、景気が良い場合は、利用者が増えるため、安すぎる料金設定は利益損失につながります。
利用者層と経済状況を考慮した価格決定は、どのホテルでも重要な手法です。
競合の平均価格を参考にする
自社ホテルの周辺にある競合宿泊施設が、どのくらいの相場なのかを参考にして料金決定する方法もあります。同じような立地・設備であった場合、安い料金のホテルを選ぼうと考えるのは、誰しも同じです。
そのため、サービス面やプラスアルファの提供ができる以外は、競合ホテル・旅館の平均価格は参考にすべきでしょう。
ただし、あまり参考にして足並みを揃える意識が強いと、価格競争になる可能性もあるので注意が必要です。
自社のバリュープロポジションを理解し、競合にどこまで価格帯を合わせるのかも考えておかなくてはならないでしょう。
AIによる価格変動システムを導入する
最近では、AIによる価格変動システムを導入し、過去の宿泊データから客室料金を算出している企業も多いです。
従業員による需要の予測は属人的であり、何よりコストがかかる点で効率的とはいえません。人材が限られているホテル・旅館では、通常業務との兼任によって負担も大きく、過酷な労働環境が強いられてしまうはずです。
しかし、AIによって過去の価格や、これからの需要予測ができれば、最適な客室料金決定と負担の軽減が実現できます。
AIを活用した価格変動システム(ダイナミックプライシング)についてはこちらの記事で詳しく紹介しています。ぜひご覧ください。
ホテルが価格変動システムを導入するメリット
常日頃から人の手によって客室料金を決めているホテルの場合、価格変動システムの導入には抵抗があるはずです。
ただし、結論からいうと価格変動システムの導入はメリットが多く、ダイナミックプライシングを取り入れている事業なら活用すべきです。
では、なぜ価格変動システムをおすすめするのか、導入時のメリットについてみていきましょう。
過去データや競合データから柔軟に決めてくれる
価格変動システムは、過去データや競合データを基にして需要予測を行うので、柔軟な価格変動を可能にしています。
上記を従業員が行う場合、収集に充てる時間が膨大になり、計測範囲が広がるほどに価格決定のズレやミスが生じやすくなるしょう。
しかし、AIがデータから割り出す値は正確であり、収集からの計測も機械が担当してくれます。
そのため、突発的なデータの変化にも対応し、柔軟な価格提案をしてくれるでしょう。
ホテル側は算出された値を参考に、自社の売上目標や人為的な需要予測を加味して価格決定をすればいいだけです。
AIによって自動で適正価格の判断が可能になる
ホテルの宿泊料金の適正価格は、本来従業員が判断・決定するものでした。しかし、価格変動システムでは、AIが自動で適正価格を提案してくれるので、人が介入する部分は少なくなります。
そもそも、従業員が判断・決定する場合、担当する人材がいなければ業務が進行できません。なおかつ、担当者がレベニューマネジメントの専任にならない限り業務の負担が大きくなる一方です。
しかし、価格変動システムを導入すれば、自動で適正価格がわかるので、担当従業員の負担を大幅に減らすことができます。
特に人材不足が懸念されるホテル業界において、AIによる価格算出の自動化は、業務効率化に大きく貢献できるでしょう。
宿泊者から見た価格変動システムのメリット
価格変動システムは、ホテル事業者に大きなメリットがあることは明らかですが、宿泊者にも利点があります。
安い時期に利用できるメリット
同じ部屋でも、価格変動により安く利用できる時期があるため、特に魅力的な室内を持つホテルや旅館には大きなメリットがあります。
直前予約や当日利用でお得なケース
空室を作らないために売れ残った部屋の価格を下げることがあるため、直前予約や当日利用でお得になる場合もあります。
ただし、需要が高い時期には客室料金が高くなることもあり、一部の宿泊者に不満が生じることがあります。
AIによる適正価格提供
AIを導入して適正な価格帯を提供することで、不満を感じる宿泊者を減らすことができれば、双方にとってメリットが大きくなります。
まとめ
今回は、ホテルが料金変動をする仕組みや決定方法、価格変動システムの導入メリットについて解説しました。ダイナミックプライシングを取り入れる業界だからこそ、AIを導入して正しい需要予測によって、宿泊者にもメリットを提供できるよう努める必要があります。
本記事の内容を理解すれば、価格変動システムの導入がいかに効率的であるかをわかってもらえるでしょう。
ぜひ、日々の業務効率化と利益の最大化を図るために、価格変動システムの導入を検討してみてください。
■記事作成:メトロエンジン株式会社
2016年創業。ダイナミックプライシングを活用したSaaSシステムのパイオニアとして躍進。ビックデータから人工知能・機械学習を活用し、客室単価の設定を行うダイナミックプライシングツールをホテルなど宿泊事業者に提供。また、レンタカー業界や高速バス業界など幅広い業界のDX支援事業も展開している。
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